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12歳。 ~いい年して女児向けにハマるおたくたち~

最近ぼくを含めたTLのおたくが現在放送中の12歳。というアニメにハマっている光景を見かけます。これはいわゆる女児向けアニメなのですが、何故このようなおたくたちがハマるのでしょうか。完全に本来のターゲットから外れているように思えます。しかしそのターゲットのズレこそが、このアニメを魅力的なものにしている要因の一つだったのです。

登場人物はタイトルにもある通り、12歳の小学6年生が主人公たちです。主人公は花日ちゃんと高尾くん、結衣ちゃんと桧山くん、この二組のカップルたちです。このアニメの良いところは、小学生向けの少女マンガ的なストーリー(原作は実際にそうだけど)にメロドラマのようなドロドロ要素少しを加えた話を12歳の子どもたちが演じていることにあります。彼らの幼い姿とは裏腹にまるで大人の真似事をしているような行動や言動をしているというアンバランスさに戯画的な面白さを覚えるのです。

更に興味深い点は、彼らすべてがあまりにも単純に、誇張された形で彼らの”役回り”が与えられている点です。例えばヒロインの花日ちゃんは、恋愛に疎い、明るくてちょっと子供っぽい女の子です。そして対照的にその彼氏、高尾くんはクールで大人っぽい、いわゆるイケメン的なセリフをサラッと言ってのけるようなキャラです。

この対比は、作品の「大人でも子供でもない12歳という微妙な年頃」というテーマの一つを体現しています。彼らのパーソナリティは、それらに従った形でのみ発露します。つまり彼らには「意外性」や「不確定性」がないのです。仮にそれらが存在したとしても、それを感じさせない様なストーリー展開が行われます。それはこのアニメが女児向けであり、他者には理解し難いような複雑な人間性を持った登場人物や、何の脈絡もない奇怪な行動をするようなキャラクターが必要ないからです。

ぼくは先程、彼らの役回りが「あまりにも単純に、誇張された形である」と表現しましたが、これは絶対的な尺度ではなく、相対的な尺度においてのことです。つまり、よくある深夜アニメであれば、前述したようなキャラクターが一人や二人は存在するし、そのような人物によって引き起こされた、ぼく達の想像を裏切るような出来事が発生します。そのような作品と比べると、これは、単純で、そして誇張された形のように感じるのです。その感覚のズレこそが冒頭で触れた”ターゲットのズレ”というものによって引き起こされたおもしろさなのです。

そしてこのアニメにはそのような登場人物やイベントは一切存在しません。すべてが瞬時に”説明でき”、そして”予測できる”のです。彼らは「王道」をひたすら突っ走ります。そしてそれを「女児向けアニメ」という特殊な器に収めることによって、ある意味でおたくたちにとっての視聴へのハードルを低くしているのです。

このアニメは予定調和を楽しめる、裏切られることがないのです。物語の”アクセント”として深夜アニメ業界で濫用されてきた何を考えてるかわからないようなキャラ、何の文脈も探し出せないような不可解なイベント、それらは一時的には視聴者の注意を引きますし、その後にうまくすべてが説明されれば物語の最高のエッセンスとなりうるでしょう。実際にそれらを活用して素晴らしい物語となった作品は多数存在します。しかし、それらは往々にして様々な要因により物語の中で説明しきれずにぼくたちに謎を残していくのです。そのようなことに疲れたおたくたちがこのアニメにハマるのは必然といえるでしょう。

色々と書きましたが、最後にぼくは言いたい。桧山きゅんかわいい。頑張って男の子しようとしてる桧山きゅんかわいいよ。かわいい。